アイシンは、大手自動車部品メーカーとして知られています。愛知県安城市の安城第2工場の一角にある無人エリアで、2台の産業用ロボットと31台の無人搬送車(AGV)を制御して複雑な業務フローを自動でコントロールしていたのは、オフィスエフエイ・コム(当時)が開発した倉庫制御システム(WCS)でした。
導入前の状況
仕入れ先から工場に送られてくる部品は、種類が多いうえに物によってロット数が異なります。工場できちんと整理・管理し、稼働状況に応じてタイミングよく組み立てラインに投入していく作業が必要になります。従来は人間が手作業でやっていましたが、多くの人手が取られていました。全社的な自働化を進める前に技術を確立させるため、試験的に自働化を進めることになりました。
システムの概要
アイシンの構想をもとに、仕分け作業を2台の垂直多関節型ロボット(いずれも知能ロボットコントローラー開発・販売のMujinが担当)、搬送作業を31台のAGVで分担し、タイミングよく部品を組み立てラインに投入する高度な群制御をWCSがすることで、工場物流の自働化を実現しました。入荷した部品をパレットや棚の状態で保管し、タイミングに応じて台車に移し替えて組み立てラインに投入する仕組みです。
無人エリアは上から見ると
こうなっていて、大まかに
このようにエリア分けされています。部品の動きを簡潔に図示すると
こうなります。具体的に見ていきましょう。
①部品は入荷するとパレットごとフォークリフトで入荷エリアに運ばれ、パレットベースに載せられます。作業者がコードリーダーで部品を登録し、AGVがパレットベースごと部品をパレット保管エリアに運びます
②WCSの呼び出し指示に応じてAGVが部品を「ばらしロボット」のもとに運びます。ばらしロボットはパレットから通い箱にばらしてコンベアに移します
③コンベア上にはコードリーダーがあって箱単位の情報を読み取ります。その後、コンベアの先にある「保管・仕分けロボット」が移動棚に移します
④移動棚はAGVが棚保管エリアに運び、待機します。
⑤部品が必要になるタイミングが近付くと、WCSが移動棚を呼び出し、AGVが再び「保管・仕分けロボット」のもとまで運びます。ロボットは、必要な部品をセットにして台車に移し替えます
⑥台車をAGVが台車保管エリアまで運び、いったん待機します
⑦適切なタイミングになるとAGVが組み立てラインに向かい、各部品供給ポイントに届けます
——というのが一連の流れです。
AGVは床に貼られた二次元コードを読み取って動くため、床面には一定間隔でコードが貼られていました。
システム最大のミッションは、組み立てラインに滞りなく部品を供給すること。そのためにWCSは、約150種類もある部品のそれぞれの在庫の変動をあらかじめ予測しながら管理しています。具体的には、
1)生産計画と生産実績を基に、1箱供給したら1箱分を加算し、1台生産されたら1台分の数量を減算することで、組み立てライン上の在庫数をリアルタイムに把握
2)組み立てライン上の在庫数▽1台生産するのに必要な個数▽サイクルタイム——から、組み立てライン上の在庫がなくなるまでの時間(在庫時間)を計算
3)組み立てライン上の在庫時間が少ない部品を組み合わせて、移動棚から台車に載せて搬送
しているのです。
さらに、移動棚から台車への移し替えを効率よく進めために、部品を移動棚に保管する時点であらかじめ同じ搬送箇所に投入する部品は同じ棚に入れるようにしています。事前のこの一工夫により、台車への部品の移し替えは1、2台の移動棚からだけで済むため、組み立てのスピードに間に合わせることができるようになりました。
また、ライン投入のことだけを考えればあらかじめ早い段階で台車ごとに部品をばらした方がスムーズですが、それでは広いスペースが必要となります。より多くの部品を手元で管理できるように、ギリギリまでパレットの状態で保管できる調整もWCSがしているのです。
WCSは他にも、ロボットのもとにAGVが出入りするための扉の開閉やAGVによる空箱の回収まで管理しており、システム全体に目配りして指令を出しています。ここまで完全に自動で部品を供給するシステムは、実は自動車メーカーでも初めて。工場物流の新たなあり方を示したとして大きな関心を集め、稼働時には多くの関係者が視察に訪れました。
導入の効果
システムの導入により、作業人員はかつての12人/日から4人/日へと3分の1にまで減少。在庫がリアルタイムで管理できるようになった他、重い部品箱を人が手で扱う危険性や作業者が長い距離を歩く必要がなくなるなど、効率化や安全性、身体的負担の面で改善が進んだということです。
お客さまの声
アイシン生産革新推進部物流技術室物流企画グループの鈴木直樹さんは「アイシン初の物流自働化を実現し、物流革新の大きな一歩となった。今回の取り組みを皮切りに物流自働化を全社展開し、更なる省人化へつなげていきたい」と話していました。
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新エフエイコム株式会社 ライター 竹花 周
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