カーボンフットプリントに対応する「次世代制御盤」を初披露 MECT2023

カーボンフットプリントに対応する「次世代制御盤」を初披露 MECT2023

国内最大級の設備機械・技術の専門展「メカトロテックジャパン(MECT)2023」が2023年10月18日(水)〜21日(土)、名古屋市港区のポートメッセなごやで開かれました。新エフエイコムは、親会社の岡谷鋼機と共同でブースを出展。今回が初披露となる次世代制御盤や無人搬送フォークリフト(AGF)などを展示し、多くの来場者を迎えました。

温室効果ガスの排出量に関するデータをクラウドで一元管理

会場はこちら。今年で開業50周年というポートメッセなごやです。

1年前に生まれ変わった第1展示館の入り口には巨大なスクリーンも。

会場は第3展示場まであり、4日間の会期中に延べ7万7000人を超える来場者でにぎわいました。

新エフエイコムは第2展示場にブースを構えました。中でも来場者の関心を集めたのは、今回が初出展となる次世代制御盤のデモ機です。カーボンフットプリントに対応し、サプライチェーンを激変させると期待されています。

地球温暖化が進むに従い、欧州連合(EU)では2024年から産業用・電気自動車用バッテリーでカーボンフットプリントの申告義務化が予定されています。カーボンフットプリントとは、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルまでのサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスにわかりやすく表示する仕組みのこと。

サプライチェーンをさかのぼってデータが必要となるため、日本の部品メーカーといえども欧州の製品メーカーに部品を納入しようとするならば、自社製品を作るのにどれだけの温室効果ガスが排出されるのかを把握していなければなりません。そのために必要な各種データを収集し、一元管理できるのがこの制御盤です。

工場内のさまざまな生産装置から電気・ガス・水・エアーなどさまざまなデータを取得し、クラウド上に蓄積します。機器のメーカーに関係なくデータを一元的に管理でき、手元のスマホ等どこからでも確認することも可能です。サプライチェーン上でデータを連携するプラットフォームとも直接やりとりできる仕組みになっています。欧州ではクラウド連携が標準になりつつありますが、日本ではまだまだというのが現実。そこで新エフエイコムが新たにご提案するというわけです。

制御盤を見慣れた人なら、この外観を見ただけでも「普通の制御盤とちょっと違う」ことに気づくはず。左上と左下には、電力のデータを表示できるモニタ付きの機器が見えます。中央にあるPLC(機器や設備を制御するコントローラー)はコンピューターのOSの一つであるLinuxを搭載しており、制御盤から直接ネットに接続してクラウドとデータをやりとりすることが可能。ブースでは、協働ロボットを動かしながら、リアルタイムでデータを取得する様子を展示していました。

クラウドPLCと5G回線を使ったリモート監視のデモ展示も

次世代制御盤の隣では、東芝のクラウドPLCの技術などを使ったシステムを紹介。クラウドPLCや5G回線を使って、スマラボ小山の装置を動かすと同時に展示会場から遠隔監視する様子を再現したデモ展示がされていました。これも現場の省電力化につながることなどから、温室効果ガスの排出量を削減する取り組みによって経済を成長させようというグリーントランスフォーメーション(GX)の一つとして期待されています。

VisionNavのAGFが鉄パレの段積みで高い技術力をアピール

一方、ブースの大半を使ってデモ展示していたのはおなじみVisionNav RoboticsのAGF。これまでもロボットテクノロジージャパン2022展関西物流展などでの展示風景をご紹介してきましたが、今回もMujinの無人搬送車(AGV)と連携して鉄パレットの段積み、段バラシを繰り返しやってみせていました。

これまでもお伝えしてきた通り、4本脚の鉄パレットを段積みするのは、脚の位置を正確に把握する高度な技術が必要で、VisionNav RoboticsのAGFの見どころの一つ。安定して動作を繰り返すAGFを前に、来場者からの質問などが相次いでいました。

飯野TAがワークショップで部品物流について解説

会期2日目の19日(木)には、会場内にあるワークショップスペースで、弊社の飯野英城テクニカルアドバイザー(TA)によるワークショップ「製造業における部品物流の自動化実績と倉庫物流との違い」がありました。

飯野TAは、YouTubeの「ゆっくり動画」でおなじみのキャラクター「魔理沙」と「霊夢」が登場するオリジナルの動画を使いながら、製品物流と部品物流の違いについて解説しました。

完成した製品を運ぶだけで良い製品物流に比べて、部品物流は工程によって時間あたりの処理量(スループット)が異なるうえ、下流工程のタイミングに間に合うように部品を届けねばならないために制御が難しいと指摘。平均の入出庫量から単純にAGVの導入台数を計算しただけでは、現実にはAGVが渋滞したり間に合わなくなったりする事態が頻発しがちで、実際には工程ごとのピーク時の搬送量や交差点のスループットを頭に入れてプログラムすることが大切だと説いていました。また、日々の物流の変動による変化を、自動化前は人が吸収していたと説明。自動化後は中間バッファとして一時的に部品を保管することで日々の変動を吸収する工夫も必要だなどと話していました。

会場では50人近くの聴衆が耳を傾けたほか、会場外にも足を止めて話を聴く立ち見客の姿も見られ、多くの来場者の注目を集めていました。

この時使われた動画「部品物流自動化 持ってきすぎ?足りなすぎ?どうなってるのよ<ゆっくり解説>」は、「新エフエイコムちゃんねる」にて公開されています。部品物流についての考え方がわかりやすく解説されていますので、関心のある方はぜひご覧ください。

ナットランナーで治具の段取りを自動化

他社のブースにも目を向けてみましょう。一つ目は、産業機械用の各種部品を扱う「イマオコーポレーション」。ロボットの手先につけてボルトやナットを締めたり緩めたりできる「ナットランナー」を使って、加工対象のワークを決まった位置に固定するための「治具」の取り替えを自動化するシステムが展示されていました。

こちらがサブプレート上に配置された治具で赤色のワークをクランプ(固定)した状態ですが、

サブプレートごと取り外して治具を交換することが可能です。サブプレートの底面には4本の黒い突起(クランプボルト)が付いており、それをフレックスゼロベース(下半分の黒い部分)にはめ込み、引き込むことで位置決めと固定がされる仕組みです。

こちらがフレックスゼロベースの写真。上面4か所の穴にクランプボルトをはめ込みます。左側面の六角ヘッドをナットランナーで締めることでクランプボルトを引き込み、サブプレートが位置決めと共に固定されます。

現代の工場で求められる多品種少量生産では、生産する製品が変わっても同じロボットが作業できた方が効率的です。製品ごとに治具を取り替えて生産するのも一つの手段。治具の段取りをどう効率よく自動で実現するかというのも課題の一つです。

ネコ型配膳ロボットを工場で使ってみる

もう一つ、機械販売の「三機」のブースものぞいてみました。こちらは、近ごろファミレスなどで見かけるようになり、子供たちにも人気のネコ型配膳ロボットを、工場内の搬送などに使おうというアイデアを展示していました。

当初はネコ型配膳ロボットの輸入販売を手掛けていた同社。ふとした折に「工場でも使えるのでは?」という声があがったのをきっかけに、得意先で使ってみてもらったといいます。数百キロのものを運べるわけではなく、位置決めの精度も数センチの幅があるという点で、やはり専用のAGVには及びません。しかし、「10〜20キロ程度の荷物を人が運んでいる作業はまだまだ工場内にある」といい、それを配膳ロボットにやってもらうことで、浮いた人手をもっと別の仕事に回すことができます。位置決めのズレは、配膳のトレー部分に小さな2次元コードを張り、それをカメラで読み取って補正することでカバーしました。

一方で、ネコ型配膳ロボットはサービスロボットとして相当数が市場に出回っており、家電並みの扱い易さと低価格を実現している点では大きなメリットがあるといいます。工場のレイアウト変更があった場合のマッピングの再設定等も作業員が簡単にできるとのこと。ブースで展示していたのは協働ロボット2台の間をネコ型配膳ロボットが行き来するというシステムでしたが、全体で1000万円ほどでできるということでした。

既に自動車工場やクリーンルームなどでの導入例があるそうで、担当者は「要は適材適所。それほど精度が必要でない作業の自動化に使ってもらえば、自動化のハードルを下げることができる」と話していました。


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【投稿者・お問い合わせ】
新エフエイコム株式会社  竹花 周
E-mail: s.takehana@s-facom.jp

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