ものづくり産業の一大拠点で初開催 RTJ2022

ものづくり産業の一大拠点で初開催 RTJ2022

産業用ロボット・自動化システムの専門展として初の開催となる「ロボットテクノロジージャパン2022(ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2022、RTJ2022)」が2022年6月30日(木)〜7月2日(土)の3日間、愛知県常滑市のAichi Sky EXPO(愛知県国際展示場)で開かれました。中部地方は自動車産業の関連企業などが多く集まっていることもあって、製造業では一大拠点となっています。来場者も作業服姿のエンジニア風の人が目立つなど、スーツ姿が普通の東京の展示会とは一風違った雰囲気を醸し出していました。弊社が携わったブースや、会場で目に止まった五つの展示を紹介します。

AGFとAGVの連動デモを披露

弊社は岡谷鋼機と共同でブースを出展しました。ブース上部にはFA.COMのロゴも掲示。なかなかに目立ちます。

デモは樹脂製パレット、鉄製パレット、ネステナー(保管棚)を組み合わせ、弊社が販売代理店となっているVisionNav Roboticsの無人搬送フォークリフト(AGF)とMegviiの無人搬送車(AGV)との連携でパレットの段積み・段ばらしや棚入れ・棚出しの作業を繰り返す様子を見ていただきました。関西物流展のときからさらに複雑な動きとなっているので、一連の動きを一部分ですが見てみましょう。

横移動は速度の出る AGVを使い、棚入れなどの作業はAGFがするという、実際の運用をイメージした使い分けをしています。一連の動作の中でAGFの性能の高さを示していたのが、鉄パレットを2段に重ねる段積みの場面。

ご覧のように、鉄製パレットを重ねるためには4本の脚を正しくピンポイントで1段目の脚の上に重ねねばならず、正確に位置を把握して動きを制御する必要があります。AGFの中でもこの作業に対応できる機種は多くはないとのことでした。

ブースではこの他、デジタルツインのパネルや動画なども展示。展示場の出入り口に比較的近いブースということもあって、多くの来場者を集めていました。

ARを応用 ダブレットで撮影するだけで簡単教示

電機メーカーのダイヘンは、AR(拡張現実)技術を応用してタブレットで写真を写すだけで溶接箇所を指定できる教示レスシステムを展示していました。

ただしここで使えるタブレットはiPad Proのみ。というのもiPad ProはレーザーセンサーのLiDARを搭載しており、これを使って3Dデータを取得することができるからです。

利用には、まず専用アプリの「AR Teach」のダウンロードが必要です。アプリを起動させ、溶接する場所をカメラで撮影します。

溶接トーチの根本にARマーカーをつけておき、マーカーとワークを同じ画面に入れることで、まずロボットの位置を確認します。

すると3Dデータをもとにアプリが自動で溶接線(溶接する箇所)を認識し、タグと呼ばれる青い点線で表示します。画面上でタッチして溶接を始める位置と終わる位置を指定すると、

溶接線が確定しました。あとは溶接条件などを設定して転送します。実際に溶接作業を始める際には、ロボットは最初に先端のワイヤをワークに当て、微弱な電気を流すことでワークの正確な位置を確認してから溶接を始める手順になっています。

ワンタッチでツール交換

機械部品メーカーのイマオコーポレーションのブースで紹介していたのは、メカ式のツールチェンジャー「SMARTSHIFT(スマートシフト)ロボットシステム」です。多くのツールチェンジャーは圧縮エアを使ってツールの着脱をしており、交換のたびにロボットの動きが止まってしまうという課題がありました。一方SMARTSHIFTはエアや電力を使うことなく、機械的な構造で着脱を実現しているのが特徴。ワンタッチでロボットの動きを止めることなくツールの交換ができます。

もちろん手動での着脱も可能で、ボタンを押しながらスライドさせるだけの単純操作でワンタッチでできます。システムを導入するにはロボット側に「ロボットマスター」、ツール側に「ツールホルダー」と呼ばれるアダプターのようなものをそれぞれ取り付けるだけでOK。ロボットによる交換をする場合はさらに専用のツールポケットが必要になります。

どんなワークもこのハンド一つで

機械部品メーカーのTHKのブースでは、TNHと名付けられた「ならいハンド」シリーズが出展されていました。12本のシャフトがさまざまなワークの凹凸に沿った任意の場所でロックされ、ワークを持ち上げることができる仕組み。一つのハンドであらゆるワークに対応することができます。

写真のように二つを向かい合わせた把持型の他に、シャフトの先に吸着パッドを付けたものを単独で使う吸着型もあります。標準品は可搬重量1キロですが、アクチュエーターを変えたり、吸着パッドの能力を変えることで可搬重量を大きくすることも可能。自動車部品の小物や形が一定でない冷凍食品などを扱うラインで既に使われているそうです。モノづくり日本会議による「2021年超ものづくり部品大賞」の機械・ロボット部品賞を受賞しています。

協働ロボットの速度を細かくエリア分けして設定

ロボットメーカーのABBのブースでは、協働ロボットの新しい使い方として「ダイナミック・セーフティ」のデモ展示がありました。ABBの協働ロボット「GoFa」と、ロボットが自身の位置を監視する制御ソフト「SafeMove」を組み合わせることによって、あらかじめ設定したエリアごとに人が近づいた場合のロボットの速度を変えるという運用法です。協働ロボットは安全性を優先するあまり速度が遅く、生産効率が上がらないという現場の課題に対する一つの解決法として考えられました。

ロボットの速度を変えるエリアは3次元で細かく設定することができ、「この領域に人が来たら速度を落とす」「この領域に人が来たらトルクも落とす」といった指示がエリアごとに可能です。また、実際にどのような動きになるのかを「RobotStudio」というソフトでシミュレーションしたり、実機と同期させてデジタルツインを実現することも可能ということでした。


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【投稿者・お問い合わせ】
新エフエイコム株式会社 ライター 竹花 周
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