Techrumブースでデモ機出展 国際物流総合展2022

Techrumブースでデモ機出展 国際物流総合展2022

最新の物流機器・システムなどを集めたアジア最大級の専門展「第15回国際物流総合展2022」が2022年9月13日(火)〜16日(金)、東京都江東区の東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開かれました。526の企業・団体が出展する過去最大の展示規模となり、多くの来場者でにぎわいました。

進化した靴箱オーダーピッキングシステム

久しぶりの東京ビッグサイトです。新型コロナも一時に比べれば少し落ち着き、街に人出が戻ってきた中での開催となりました。東京での開催は4年ぶりで、この間物流業界でのロボットのニーズは一層高まってきています。

今回、弊社は野村不動産が主導する企業間共創プログラム「Techrum」(テクラム)の出展スペース内で二つのブースの展示に協力しました。その一つがエプソン販売のブースです。3月の国際ロボット展でお披露目した「棚搬送 AGV×靴箱オーダーピッキングシステム」が、進化して帰ってきました。国際ロボット展ではお見せできなかった棚搬送の無人搬送車(AGV)との連携を実現し、完成度を一段と高めることができました。一連の動きを見てみましょう。

指定された靴箱を2次元コードで読み取って引き抜き

手前左の発送用段ボール箱に投入します。

靴箱入りの段ボール箱がコンベアに乗って右側のラベル貼り・伝票投入用ロボットの元へと送られる間に、靴箱を積んだ棚がAGVによってくるりと回転。

棚の反対側がこちらを向きました。手前右ではロボットが段ボール箱にラベルを貼っています。

左側のロボットが次に引き抜く靴箱を探す間に右側のロボットは伝票を段ボール箱に投入。

反対側の面からも靴箱を引き抜くと、棚を入れ替えるべくAGVが後退していきます。

靴箱を抜かれた棚は右奥に移動。

代わりに左奥にいた棚がAGVによって運ばれ

手前までせり出してきて棚の入れ替え完了です。この動きを繰り返していました。

棚を動かしていたのは棚の下にもぐっている国産メーカー匠製のAGV。床に貼られた2次元コードを目印に動きます。

今回、AGVとの連動によって新たな課題が生じました。それは、棚がAGVによって移動するたびに、わずかながら位置や向きが毎回微妙に変わるという問題です。ロボットが靴箱を引き抜くためには、棚の位置や向きを正確に把握しておかなければなりません。AGVの動きの誤差はわずかに数センチ程度なのですが、それでもずれるとロボットは靴箱をつかめないのです。そこで、今回は棚の本体の各側面にも2次元コードを付け、その都度カメラで読み取って棚の位置を把握し直すことにしました。そのため、国際ロボット展の時にはコンベアの上辺りに固定していたコード読み取り用のカメラを、ロボットハンドの上部(写真中央の黒い箱)へと移しています。

写真でわかるように、ロボットは靴箱を引き抜く作業に入る前に毎回、棚の前面と側面に貼られた2次元コードをハンドに付いているカメラで読み取り、棚の位置や向きなどの情報を更新しているというわけです。

ブースにはシステムと連動する倉庫管理システム(WMS)や倉庫運用管理システム(WES)、倉庫制御システム(WCS)などを紹介するコーナーも設置。事例紹介の動画なども流していました。

薄型段ボールの組み立てから商品投入等までを全自動で

もう一つは物流システム開発などで知られるタクテックのブースです。ここでは厚さ2センチの薄型段ボール箱を組み立てから商品投入、封函、宛先貼りまで全自動でこなす世界初の装置を展示しました。

薄型段ボール箱は、再配達の必要がない郵便受け投函型の配送サービスに使われるため、コロナ禍などで宅配物が急増する中、物流業界の深刻な人手不足もあって注目を集めています。薄型段ボール箱の組み立てはこれまで機械化が不可能とされてきましたが、今回独自の工夫により接着剤を使わずに自動で組み立てることに成功しました。デモ機はタクテックと日本トーカンパッケージ、OSARO、弊社の4社協業で実現しました。

弊社は工程の中ほど、商品を投入するロボットを担当しました。エレクトロニクス商社大手のカナデンと共同開発した可動式架台一体型ロボット「KaRy」です。米国OSAROのAIピッキングシステムを搭載し、多様な商品もマスターレスで扱える利点をアピールしています。

デモラインの流れを見てみましょう。

最初は日本トーカンパッケージの装置による薄型段ボール箱の組み立て工程です。写真の場面ではまだ1枚の段ボールですが、出来上がりの底面と同じサイズのピストン状のパーツで下方へ押し出される間に、一瞬でトレイ状に組み立てられます。

次がOSAROのシステムを搭載したKaRyによる商品投入工程です。デモでは6ピース入りのチーズの箱をピッキングしていました。

商品を入れ終わるとタクテックの装置による封函工程です。写真右側の部分でふたを折りたたみ、写真左側の部分でテープを裏側までまわるように貼って封函します。

最後は同じくタクテックの装置によるラベル貼り工程です。写真右側から流れてきた薄型段ボール箱に、写真左側の部分でラベルが貼られます。

これまで薄型段ボール箱は接着剤を使ってトレイ状の形にまで人手で組み立てる必要があり、組み立て後も保管にスペースが取られるなどの課題がありました。今回の装置によって1枚の段ボールの状態から最終工程までの自動化が実現するため、大幅な省人化・省力化になると期待されています。

米国ユニコーン企業のAIソフトウェアを日本へ

住友商事による新時代の物流施設「SOSiLA」のブースでは、同社が日本に展開しようとしている米国のユニコーン企業「Dexterity」(デクステリティ)のロボットAIソフトウェアを紹介するセミナーが開かれていました。

DexterityのAIソフトウェアは、マスター登録なしで50万種類の商品をピッキングしたり、重量やサイズ、バランスを考えながらトラックやコンテナへの積み付け、積み下ろしができたりします。荷物が重い場合は複数台のロボットが協調してピッキングすることも可能で、既に米国の大手国際物流施設や小売業者に導入され、実績を積み上げているとのことです。日本での展開に当たっては、ロボットSIerやマテハンメーカーの機器などと協力し、導入のハードルを下げるためにリースなどの工夫もしたいとのこと。11月には茨城県土浦市にデモ機を設置し、見学も可能になると説明していました。

実際の動きはこちらの動画をご覧ください。

ゴムの力で〝なじむ〟ハンドを

タイヤメーカーのブリヂストンのブースでは、ゴムを使った人工筋肉による新しいロボットハンドが展示されていました。人工筋肉はゴムチューブを繊維で覆ったもの。エアを送り込むと太さが膨らむ代わりに長さが縮むという性質を利用して、ハンドなどの曲げ伸ばしをしています。エアの力で動くので柔らかく、対象物に「いい感じ」になじむことができるといいます。一方で柔らかい割に把持力は強いため、中身が変形するパウチ状のものなどは数個まとめてつかむことも可能です。

ゴムの人工筋肉自体は約40年前からある技術だとのことです。人間の手と同様に、隙間に指が入らないと物がつかめないという弱点はありますが、その場合は吸着ハンドに付け替えて対応することが可能。作業環境やワーク等の諸条件によりますが、ユーザーの要件を十分満たせうるレベルまでゴム人工筋肉を作り込んでおり、また、ゴムという素材のユニークさを生かし、タイヤと同様、指を交換するメンテナンスサービスを検討しているそうです。

ブースで披露していたデモの映像はこちらをご覧ください。

既にグループ会社であるブリヂストンスポーツの物流倉庫などでのピッキング作業の自動化に向けた実証実験も進んでおり、ゴム人工筋肉を使用したソフトロボットハンドだけでなく、ピースピッキングロボットシステムとしてのレンタルの受け付けも始めています。

ブースにはちょっと変わった形のロボットハンドも展示されていました。巻き付くように丸く曲がる帯から指状のものがすだれのように5本ついており、いずれも曲げ伸ばしが可能です。ドライフラワーの花束に器用に巻き付いて優しくつかんでいました。


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