先端ロボット技術の展示会ににぎわい復調の兆し ロボデックス

先端ロボット技術の展示会ににぎわい復調の兆し ロボデックス

ロボットの技術の展示会「ロボデックス」が2022年1月19〜21日、東京国際展示場(東京ビッグサイト、東京都江東区)で開かれました。オフィスエフエイ・コムが加盟するFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)もブースを出すというので、2日目の20日に会場まで出掛けてみました。

最寄り駅の東京ビッグサイト駅を降りると、すぐに特徴的な外観の会議棟が目に飛び込んできます。

巨大な掲示板には「ロボデックス」の表示が。

同じ東展示棟では、関連を含めたさまざまな展示会も開かれていました。ちょうど直前に新型コロナのオミクロン株感染が急拡大し、急きょ出展を取りやめたとみられるブースも散見されましたが、来場者は3日間で3万2795人(前回1万4802人)、出展社数も1064社(同984社)と、コロナ禍の直撃を受けた前回を上回るにぎわいを見せていました。

協働ロボットが目白押し

まずは弊社も所属するFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)のブースへ。当初は加盟社からのボランティアなど数人が常駐する予定でした。しかしオミクロン株感染の急拡大を受けて急きょ職員だけの常駐とし、展示物もロボットをあきらめて動画と資料だけに絞ったそうです。担当者によると「協会のことが徐々に知られるようになり、ブースの来場者から会員の情報について尋ねられることが多くなった」とのこと。その際は協会HPの各種コンテンツへと誘導していると話していました。私が話を聞いている間にも来場者から声がかかっていて、ニーズの高まりを感じさせました。

会場を回ってみると、今回は協働ロボットがらみのソリューションが目立ったように思います。協働ロボットの先駆者を自認するデンマークのロボットメーカー、ユニバーサル・ロボットのブースでは、溶接やコンベアトラッキング、パレタイジングなどさまざまなシーンでの利用を想定した協働ロボットのデモ装置が並んでいました。双腕ロボットによるねじ締めの装置では、担当者が「力覚センサがロボットに内蔵されているので、締める力を調節しながら作業できる」と説明。協働ロボットの可能性の大きさをアピールしていました。

住友重機械工業のブースの一角では、以前スマラボ小山でも展示していた協働ロボットSawyer(ソーヤー)が3台並んでいました。ロボットの動きを指示する際に、専用の入力機を使わず直に手でアームを動かすことで動作を覚えさせる「ダイレクトティーチング」の機能を、来場者が実際に手で触れて体験できる展示にしたそうです。複雑な動きも可能な7軸の関節はそれ自体が柔軟な構造をしており、人がぶつかっても安全だということなどが詳しく紹介されていました。大手自動車メーカーの生産ラインにも導入された実績があるとのことです。

エレクトロニクス商社の佐鳥電機のブースでは、メーカーごとの協働ロボットの仕様に合わせた3種類の専用台車を展示していました。人と一緒に作業できることが特徴の協働ロボットは、台車に乗せて置き場所を選ばないようにすると、使い道や可能性が更に広がります。しかし、コントローラの大きさやコンプレッサの有無などがメーカーによって異なるため、各社に合わせた台車が必要とのこと。今回は参考出展のものも加えて3種類をそろえていました。会場では3台が仲良く並んで、ピンポン球のセットを組み立て、検査し、梱包する作業を分担してこなしていました。

ロボットベンチャーのDoogのブースでは、協働運搬ロボット「サウザー」などが展示されていました。人や台車を追従したり、ルートを記憶して再生走行したりすることができます。タイヤが大きいので少々の段差も越えられ、雨天の屋外でも稼働できるのが特徴。ボタン一つでの操作でき、短時間で使えるようになる手軽さが好評だそうで、ブースでも実機を触れるようにしていました。工場や倉庫などでの搬送だけでなく、近年は働き手の高齢化や担い手不足が進む農業現場でも使えるよう足回りをクローラ型にした「メカロン」も展示されていました。

物流倉庫向け自律走行搬送ロボット(AMR)を設計・開発するシリウスロボティクスは、倉庫を模したブースでピッキング補助のAMRが稼働する様子を展示していました。AMRは送り先ごとに詰める商品の棚を自律走行で順に回り、作業員は自分の受け持ちの棚にAMRが来たときに画面に表示された商品を載せてやるという仕組みです。作業員は送り先ごとに商品を探して倉庫中を歩き回る必要がなく、担当のエリア内だけの移動で済むので、新人でも効率よく作業ができます。ブースではAMRが器用に通路を通り、目指す棚が重なった場合もきちんと並んで順番を待つ様子を見ることができました。

保管からピッキングまで——スマート物流EXPO

同じ会場ではスマート物流EXPOも開かれていました。物流機器メーカーのオカムラのブースでは、ロボット倉庫システム「オートストア」やパレットの保管システム「サイビスター」などのデモ機が動いていました。オートストアは小さなコンテナを高密度に積み上げたシステムで、上部を走るロボットがコンテナを引き上げたり下ろしたりして品物を出し入れし、小さな商品を扱うのに向いています。サイビスターは、それより大きなものを載せたパレットを高密度に保管するシステムで、前後左右に走れるシャトル(搬送台車)とリフター(昇降機)を使って出し入れします外からきたパレットをシステムまで運ぶ無人フォークリフト(AGF)の動画展示もありました。

デジタルピッキングシステム業界NO.1のアイオイ・システムのブースでは業界初「3D-プロジェクションピッキングシステム(3D-PPS)」を展示していました。プロジェクタを使ってピッキングする箇所を光らせるシステムに、3Dセンサーのポカヨケ機能を新たに組み合わせ、奥行きを表す深度も測れる最新式のピッキングシステムです。今まで複数センサーを取り付けなければポカヨケができないところも単体でポカヨケが可能となり、構造や設定をシンプルにすることができるとのこと。棚や平置きを問わず使用でき、傾斜のある投入先でもポカヨケ設定が可能なのも特徴の一つです。本社のショールームと映像を常時接続し、リアルタイムで対応してくれる「LIVEショールーム」コーナーもありました。

生産管理やロボット制御の先進技術も——スマート工場EXPO

やはり同じ会場のスマート工場EXPOでは、ロボットメーカーの安川電機のブースのデモ機が目を引きました。3台の産業用ロボットやサーボモータ、インバータなどを使って、配膳、加工、研磨、検査の4工程からなるプレス加工の生産セルを再現したものです。2021年春に製品化された「YRM-Xコントローラ」がセル内のデータを一括して高速かつリアルタイムに同期し、統合的に制御しているとのこと。集められたデータは分析され、解析結果が生産セルにフィードバックされることで稼働や品質の安定化、工程の改善などを実現しているとのことで、その様子がデモ機上部のディスプレーに表示されていました。担当者は「新しい生産管理や保守のヒントになれば」と話していました。

ロボット制御のシステムソフトウェアを開発・販売するリンクウィズのブースをのぞいてみました。ロボットと3Dスキャナを組み合わせ、ワーク(加工対象物)の個体差に応じてティーチングのデータを自動的に補正する「L-ROBOT」と、点群データを使った検査システム「L-QUALIFY」を組み合わせたデモ機を展示。ロボットが集めた検査データはクラウドの仕組みを通じて前工程や後工程にフィードバックし、品質改善につなげることができるとのことでした。

会場で異彩を放っていた日本鳩対策センターのブースも番外編として紹介しましょう。工場や倉庫は屋根の高い所が多く、紛れ込んだ鳩に巣を作られてふん害などに苦しむケースが多いそうです。一度巣を作られると毎年来ることになり、素人対策では太刀打ちできないとか。おかげで毎年出展していて問い合わせも多いそうです。「鳩対策認定マイスター」の肩書きを持つ担当者は「20年以上の研究成果の積み重ねに裏付けられた対策を提供します」と胸を張っていました。


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