人工知能EXPOに見るAIの活用事例4選

人工知能EXPOに見るAIの活用事例4選

日本最大の人工知能(AI)技術の専門展「第6回AI・人工知能EXPO【春】」が2022年5月11日(水)〜13日(金)、東京都江東区の東京ビッグサイト南展示棟で開かれました。近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や業務効率化の現場では、AI技術をいかにうまく利用するかが課題解決の一つのカギとなっています。産業界のAI技術の先端をのぞきに行ってきました。

色分けで不良品の深層学習を効率化

京大発のベンチャー企業 Anamorphosis Networks(アナモルフォシス・ネットワークス)のブースでは、外観検査の不良パターンを学習する際、色分けをすることで効率的に不良の種別を学習できるAIソフトウェア「NuLMiL」(ヌルミル)が展示されていました。

製造業のAI外観検査では、数多くの不良品の画像をAIに深層学習させることで、AIが良品と不良品の違いを見分けられるようになります。ただし傷や変色、欠けなどの不良箇所を画像上で指定した上で登録する必要があり、これまではどの不良パターンも同じ指定の仕方しかできないため、多様な不良パターンに対応するには大量の学習用画像を必要としました。

「NuLMiL」では、不良箇所を指定する際に傷なら青、変色なら緑、欠けなら赤、というように、不良パターンに応じて色分けし、画像上の不良箇所をタッチペンで塗ることができます。不良パターンには形や大きさなどにそれぞれ特徴があるため、パターンごとに学習すれば効率よく学習でき、必要な画像が少なくても高い精度で検出できるようになるのです。

色分けに使えるのは10色。さらに、不良品だけでなく良品の画像も学習させれば、「どの不良パターンにも当たらないが良品でもない」ものを「未知の不良」品として見分けることもできるとのことでした。

クラウドからエッジへ

半導体設計会社のEdgeCortix(エッジコーテックス)のブースでは、単体のカメラによる深度推定のデモが展示されていました。

単眼のカメラで物体の深度を推定するアルゴリズムは計算が複雑で高性能のGPUが必要なため、従来のハードウェアではリアルタイムの推定が難しいのが実情でした。そこでEdgeCortixは、独自の技術によってAIの演算処理を高速化するDynamic Neural Acceleratorを開発。単眼カメラによる物体の深度推定を端末側(エッジ)で処理することを可能にしました。

AIは大量のデータを扱うことが多いため、各種データを通信でデータセンターに送り、主要な処理をデータセンターで行うクラウド型のサービスが少なくありません。その方が端末に高価なチップを使わずに済むというメリットもあります。一方で、クラウド型のAIには通信による遅延などで起こる反応の遅さやセキュリティ面でのデメリットがあり、近年は処理を端末側で済ませるエッジ型のAIが改めて求められており、さまざまな技術開発が進められています。

全方位から外観検査 撮像から判定までを1台で完結

AIシステム開発のHACARUS(ハカルス)のブースでは、複雑な形状の立体物でも全方位からチェックできる外観検査システム「HACARUS Check」(ハカルスチェック)を展示していました。

6軸の協働ロボットのアームに点灯型のリング照明付きカメラがついており、ワークを載せる回転昇降台と連動して、あらゆる方向のさまざまな角度からチェックできる仕組み。従来の装置ではチェックが難しかった箇所も検査を可能にしました。検査はHACARUS独自のAIエンジンを使い、少量多品種のワークにも対応。撮像から判定までを1台で完結させることで、外観検査の工数を大幅に削減できるとしています。

学習データの作成を効率的に

AI技術を支えているのは、ソフトやハードのメーカーだけではありません。AI開発プラットフォーム提供企業APTO(アプト)のツール「harBest」(ハーベスト)では、一般の人の手を借りてAIの学習用データを効率的に作成する仕組みを提供しています。

AIの学習用データを作成する際には、データの分別やラベル付けといったアノテーションと呼ばれる作業が必要になります。ただ、扱うデータの量が膨大なため、時間と手間がかかることが課題でした。そこでスマートフォンのアプリを通じて学習用データの写真を公開し、アプリのユーザーにアノテーションの作業をしてもらおうというのがharBestのサービスです。ユーザーはアプリ内の写真から学習の対象箇所を囲むなどのアノテーション作業をすることでポイントをもらえ、ポイントがたまるとギフト券などに交換できます。作業の精度や情報の秘匿が必要な場合は、アプリ上で信頼性が担保できると認められた「認定ワーカー」に依頼することも可能とのことでした。


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