国際ロボット展は2年に1度の世界最大規模のロボット専門展というだけあって、さまざまな目を引くロボットが多数展示されていました。ネットで話題になったものなど含めて、各種話題もののロボットを紹介します。
バリエーション増えた川崎重工のヒューマノイドロボット
最初に紹介するのは川崎重工業のヒューマノイドロボット「Kaleido」です。Kaleidoは川崎重工業が東京大学と連携して研究・開発を進めているヒューマノイドロボットで、2017年の国際ロボット展で初披露されました。FA.COMラボでも、東京・お台場の「Kawasaki Robostage」で展示されているKaleidoのレポートを2月にお届けしたばかりでした。
どちらかというと「いかつい」イメージだったこれまでのKaleidoですが、今回は流線型のマスクと外装を身にまとい、一気にソフトでスリムな印象に変わりました。期間中は1日4回のデモをこなし、毎回のように多くの来場者を集めていました。デモの中では一本橋を歩いて渡るだけでなく、
段差を飛び降りたり
腕立て伏せができたりします。特に歩く動作については、あえて重心を足からずらす「動的動作対応」の技術を取り入れ、人間に近い動きでスムーズに歩くことが可能になった結果、人間の平均的な歩行速度である時速4kmで歩けるようになったそうです。今回のデモでは、危険な高所での作業を人間の代わりにやるという設定で、
背中からひもで吊り下げられると
構造物を指でつかんでハンマー点検のような作業をしてみせていました。
今回の特徴は、ヒューマノイドロボットにバリエーションが増えたこと。高所作業のデモをしたのは「RHP Kaleido」(RHPはRobust Humanoid Platform の略)と呼ばれ、身長179cm、体重83kg。85kgあった先代からさらなる軽量化を実現させました。34の関節(軸)を持ち、可搬重量は60kgです。
一方、新たに登場した一回り小さいロボットは「RHP Friends」と名付けられました。身長168cm、体重54kg、関節(軸)は10本の指を含めて40あります。可搬重量は10kg。パワーと強靭さを重視したRHP Kaleidoとは別に、組み立て工場での利用を想定し、狭い通路でも通れる細い体と、人と一緒に働ける安全な設計をコンセプトに開発されたとのことです。デモでは介護ロボットとして車椅子を押したり、
初音ミクの歌に合わせてダンスを披露したりしました。ダンスは、モーションキャプチャーの技術を使って動かしているそうです。さらに
RHP Kaleidoの足回りの技術を活用した四足歩行のロボット「RHP Bex」まで登場。二足歩行のロボットは実用化に長い時間を必要とすることから、車輪で動く自走式のロボットとKaleidoとの中間を埋めるものとして開発したのだとか。そのため、
舗装道路では腹部などのタイヤを使った車輪走行も可能な仕様で
山間地の農地など、乗用車が入りにくい土地での運搬作業に活用することを想定したデモを披露していました。可搬重量は100kg以上あるとされ、
人が乗って操縦することもできます。デモを見ていた女性の来場者からは「かわいい」との声も聞かれました。用途に応じて上半身を作り替えることも考えているそうで、今後は建設メーカーやプラントメーカーとのコラボもあるかもしれないということでした。
農業現場での利用もいよいよ現実的に
農業現場へのロボット導入も急がれるところ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースでは、ヤンマーが大玉トマトの収穫ロボットを出展していました。注目は
「トランコーンパッド」と呼ばれるこちらのハンド。大玉トマトは表面にくぼみなどがあり、普通の吸着パッドだと空気が抜けてしまってつかむことができません。そこで、吸着部にスポンジ製のパッドを取り付け、トマトの表⾯に先にパッド中央の穴が触れることで吸着し、空気が抜けるくぼみにはスポンジがつぶれてなじむことで、空気の抜けを防ぐという⼯夫です。AIを使った画像認識による形状推定の機能も備えています。今後は自律走行できるように開発を進めるとのことでした。
一方、農林水産省のブースではパナソニックがトマトの収穫ロボットを展示していました。2015年から開発を始め、既に自律走行も可能で基本的な技術はほぼ開発できたとのこと。移動しながら画像認識により色で収穫する実を探し、
独自のハンドで傷つけずにもぎ取ります。既に実際に農家で実証実験も重ねていますが、課題はコストと安定性。ミニトマトや中玉のトマトに特化した収穫ロボットにしたのも、年間10か月とほぼ通年での収穫が可能で、ロボットを導入した場合の費用の回収が進みやすいからという狙いがあるそうです。
AIが熟練シェフの盛り付けセンスを習得
AI技術のエクサウィザーズのブースでは、熟練シェフの盛り付けセンスを習得したという触れ込みでロボットがパンケーキを盛り付けていました。とはいえ、シェフの盛り付けの仕方を手取り足取り真似させているのではありません。熟練シェフが「いい盛り付け」「悪い盛り付け」に仕分けした大量のパンケーキの画像をAIに学習させたうえで、AI自身に盛り付け方を考えさせているということです。数百枚のパンケーキ画像を学習しても、すぐにはうまく盛り付けられるわけではなく、最初のうちはとてもおいしそうには見えない結果になったことも。何度もトライ&エラーを繰り返してようやくできるようになったということです。
世界最大級の力持ちロボット
ファナックのブースでは遠目からもわかる大きなロボットが乗用車を上げ下げさせていて、来場者の注目を集めていました。これは世界最大の搬送能力を持つとされ、可搬重量1.7tを誇るロボットM-2000iA/1700L。同じシリーズのM-2000iA/2300は可搬重量2.3tで世界一力持ちのロボットとされます。
エプソンと明和電機がオタマトーンで競演
はからずも音符型の電子楽器「オタマトーン」の競演となったのがエプソンと明和電機です。エプソンは、「エプソンロボット音楽隊」と銘打った4台の産業用ロボットがブース入り口で来場者を迎えました。曲目もゲーム「ドラゴンクエスト」のテーマ曲やアニメ「鬼滅の刃」の映画の主題歌、英国ロックバンド「クイーン」の曲となかなかバラエティ豊かです。4台のうち3台は垂直多関節ロボットでオタマトーンの指板を押さえて音程を調節。
残る1台はMIDIコントローラーを操るスカラロボットで、正確にビートを刻んでいました。
一方、明和電機はTHKの汎用人型等身大プラットフォームSEED-Noidを使った「オタマロイド」にオタマトーンを演奏させるという真逆のアプローチ。後方にあるのは自動ドラム(音源Ⅲ)や自動木琴(マリンカ)、自動ベース(フジベース)、自動ピアニカ(ピアメカ)からなるバンドで、演目には「人生経験がないと歌えないと言われる歌を人生経験のないロボットが歌うとどうなるか」という興味から「マイウェイ」、ロボットには無理だと思われる早いテンポの歌を演奏するとどうなるか、という興味から「千本桜」の2曲が選ばれました。オタマロイドとバンドの制御は別々で、最初に「せーの」でボタンを押して演奏をスタートさせるとのこと。約1週間かけて調整したということです。
ネットで話題にも
最後はロボットや玩具を手掛けるバイバイワールドの拍手ロボ「ビッグクラッピー」です。FA.COMラボでは、かつて東京・八丁堀の「ロボットマート八丁堀店」を紹介したときにちらっと登場していました。
あのときは1体だけでしたが、今回は4体! しかも、自ら歌います。「マツケンサンバ」などを歌い、手拍子を打つユーモラスな姿が「めちゃめちゃ元気出るロボいた」などのコメントと共にSNSに投稿されて拡散。会場でも多くの来場者が足を止めていました。3体が豊かなハーモニーで歌ってリズミカルに手を叩くパフォーマンスを3曲披露。今回の展示用に新たに開発した回転台で左右の体の動きが加わり、より注目が集まったようです。
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