食品業界は、日々深刻化する人手不足に悩まされています。工業製品とは違って、パーツ(食材)の大きさや色形がばらばらなため機械化の技術的ハードルが高く、作業工程の大半を人手に頼っています。にも関わらず、衛生面の観点から低温の空間で作業せざるをえないなど、労働環境は厳しく重労働となるケースがほとんどです。このため離職率も高く、業界は常に人集めに頭を悩ませてきました。
こうした難問の解決に向けて、オフィスエフエイ・コム(当時)は企業コンソーシアム「Team Cross FA」の一員として、コネクテッドロボティクスなどとともに惣菜盛付ロボットシステムを開発しました。システムはマックスバリュ東海のデリカ長泉工場(静岡県長泉町)に導入され、ポテトサラダなどの盛り付けに実運用されています。盛り付け作業のロボット実運用は惣菜業界では初。2022年3月29日、経済産業省や日本惣菜協会などと共にお披露目の記者会見を開きました。
人並みの処理能力を実現
システムはスカラロボットを使い、食品コンテナに入れられた惣菜をロボットハンドでつかんで台上のパックに盛り付ける構造です。ロボットハンドの手元には計量センサーが付いていて、タッチパネルで指示した重さの惣菜をつかむことができます。システムの価格を抑えるために3Dビジョンなどは使っておらず、食品コンテナの重さなどから惣菜の位置を推定してハンドがサラダをつかみに行く仕組みを採用しています。
最も苦労したのは、ポテトサラダの粘着性のためにハンドにサラダがこびりつく点でした。つかむ際に細かくハンドを上下させるなどの振り落とす動作をさせることで解決しています。ハンドはマグネット式になっていて、扱う惣菜に応じて簡単に取り替えできる他、ビニールのカバーをつけることで清潔さを保っています。処理能力は1時間で4台で1000パック。熟練工とまではいきませんが、1台が1人の一般の人並みの数をこなします。
〝ロボフレ〟プロジェクトの一環として
今回の取り組みは、一般社団法人日本惣菜協会のプロジェクトの一環。経済産業省などの「令和3年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業に係るロボットフレンドリーな環境構築支援事業(食品分野)」に採択されているプロジェクトです(採択時の経産省のリリース)。システムは弊社を含む企業コンソーシアム「TeamCrossFA」やコネクテッドロボティクスなどのチームで開発しました。
今回、工場では7人体制のラインにロボットシステム4台を導入し、作業人員を3人にまで減らすことができたということです。今後、さらなる性能向上や小型化などの改良に加え、量産化などによる低価格化を進めることで、惣菜業界の大半を占める中小企業にも導入しやすくすることを目指しています。扱える惣菜の種類を増やすことや、蓋閉めや検査など前後工程の機械化、遠隔での保守への対応なども模索しています。
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新エフエイコム株式会社 ライター 竹花 周
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