オフィスエフエイ・コムが参加するコンソーシアム「Team Cross FA」のショールーム「スマラボ東京」(千代田区内幸町)に、OSARO社のAIピッキングのソフトウェアを搭載し、オフィスエフエイ・コムにてシステム設計を行なったロボット装置が新たに導入されたことをきっかけに両社のCEOによる対談が実現しました。
OSARO社のデリック・プリッドモア代表とオフィスエフエイ・コムの飯野英城代表の二人は、ご自身の事業の面白さから小さい頃になりたかったもの、これからの工場のあり方、Industry4.0についてなど幅広い話題について語り合いました。急速に成長する産業用ロボット領域で舵を取る経営者ならでは描くロボット活用の未来予想図とは。
[1/2 前編]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――新型コロナウィルスの影響下での変化や課題はありますか?
デリック・プリッドモア(以下、デリック):
良い面と悪い面があると捉えていて、まず良い面としては自社の製品に対する需要が加速し、特に様々な試験運用(パイロット)が行われたことがあげられます。逆に悪い面としては、プロジェクトの進行に遅れが出ているものがある点です。ただ総じて需要側は加速していると認識しています。
飯野英城(以下、飯野):
コロナの影響によってEコマース領域が加速していますので、弊社では物流の自動化案件が増えて忙しくなりました。確かにデリックさんの仰る通り(コロナの影響下において)自動化に対するニーズはさらに高まりましたね。
――自動化の業界の中で今後注目している領域はありますか?
デリック:
技術面で言えば、最先端の画像認識の活用事例に注目しています。例えば柔らかくて形が一定でないとか反射があるといったような、従来は認識が難しいものに対して、我々は特にカラーカメラを使いディープラーニングの技術を利用して画像認識の実現を可能にしています。
また、制御面で言えば、画像データを用いた画像認識技術で、新しいものにいかに迅速に対応していけるか、この技術と制御の組み合わせが大きな注目点です。
さらに、アプリケーション側としてはピースピッキング(単品ごとのピッキング)を主力としています。とりわけeコマース、医薬品、コスメ、小包などです。また、パレタイズ・デパレタイズにも焦点を当てています。
飯野:
物流のピースピッキングなんかは日本でも数多くあるのですが、今回スマラボ東京に展示した(OSAROのアプリケーションを搭載した)ピッキングシステムはどちらかというと工場向けです。まだまだ工場内は部品を自動供給するシステムは進んでいないので、工場向けに(ピースピッキングシステムを)導入する余地は相当大きいのではないかと予測しています。
――Industry4.0のトレンドはどう捉えられていますか?
デリック:
Industry4.0の言葉自体は定義が曖昧と感じていますが、我々が普段手がけている倉庫・工場の自動化、という領域においては常にデバイス同士が接続している状態(コネクテッドデバイス)が重要だと思っています。実際どのくらい(Industry4.0が)進んでいるかということについては、少し遅れていると捉えています。セキュリティ等の理由によってお客様側からプッシュバック(押し戻し)がありました。最良のパフォーマンス、またメンテナンスを考慮しても、常時インターネットにアクセスされた環境をお勧めしています。まとめますと、Industry4.0のような取り組みは実際進行し加速していますが、少し進行にばらつきがある面もあります。是非飯野さんの考えも聞いてみたいです。
飯野:
Industry4.0というか、スマラボのD X(デジタルトランスフォーメーション)のコンセプトでもあるのですが、データを繋いでいくということ、そのデータをいかにロボティクスや周辺システムと連携していくかという部分が非常に重要と考えています。特にこれからの時代にロボットと画像処理というのは切っても切れない関係です。今まではそれぞれ単体で動いていましたが、それらが高度に知能化された技術によってロボットが動くようになり、データがつながれていきます。つまり、高度に知能化されてはいるけれど、機能としてはすごく単純化された装置を動かしていくという事が今後の主流になっていくのではないかと考えています。
――お互いに協業するとどんな良い面があると思いますか。
デリック:
様々な協業の仕方があると思っています。ビジネスの面ではオフィスエフエイ・コムは幅広い顧客層と高度な技術者を持っているという印象があります。弊社はスタートアップ企業なので、単独で様々なお客様のシステムを作るということは難しいのですが、先程飯野さんが仰ったように高度に知能化されたロボット導入とシステム設計を同時に進めていく必要性もありますし、イノーベーティブパートナーとしてオフィスエフエイ・コムと協業していく必要があると感じています。
飯野:
まだまだ日本ではピースピッキングのような仕組みは数多くありません。その背景には、ハードウェアデバイス(カメラ)の価格がすごく高いというのがボトルネックになっているケースが多いです。そういった場合に、OSARO製品の安い3Dビジョンカメラでも様々なものを認識できるというのは、(非常に良い)特徴であると考えています。実際の現場でもしも取る技術と置く技術が必要であれば、2つのカメラを使わないといけなくて、カメラは1台300万〜500万円するものですから、それを2台もつけるのはコスト面ではやはりお客様にとっては抵抗があります。これから複数のカメラでの認識がもっと必要な場面が増えてきたら、OSAROの製品って「めちゃめちゃ良い!」と思っています。
――ところで創業にあたってのきっかけは何だったのでしょうか。
デリック:
2013〜14年に投資家として機械学習の領域に携わっていた際に、アルゴリズムの画像認識能力が人間よりも将来上回る可能性があるという動きが見られました。そこで、最先端のコンピュータービジョンのアプリケーションを使った自動化に携わるのは重要な機会だと捉えました。
飯野:
元々日本での代表的なビジネスとして自動車産業がありますよね。自動車産業に入っているロボットシステム、装置、ラインであったり、そういうシステムを自分たちで作りたいと思ったんです。特に私がいる栃木県は土地柄、本田や日産、いすゞといったような世界的に有名な自動車メーカーが多かったので、そのシステムを手がけるということで今の会社を立ち上げました。
飯野:
OSAROさんでは今後のAI製品は何か考えていらっしゃるのですか?
デリック:
優先順位としてはまずは会社をスケールさせるため、お客様に必要な技術の開発に注力しますが、一方で画像認識のネクストステップについては、より少ないデータで認識できるようにしたいと思っています。メタラーニングと呼んでいるのですが、毎回のピッキングデータから学習して反映させることを社内で開発を進めています。お客様向けにはまだ提供を行っていません。
デリック:
オフィスエフエイ・コムさんでは次のアプリケーション開発を何か計画していますか?それは直近でなくても将来的な夢でも良いのですが。
飯野:
高度に知能化されたロボットがこれからたくさん市場に出てくると思いますので、そういったものの集合体で一つの自動車製造ラインを作っていきたいと思っています。今は個別の技術で作り込んだ装置を集めることで生産ラインを作っていますが、それをもっとずっと簡単な装置の寄せ集めで自動車1台を作れるようにしたいんです。
デリック:
因みにそれは何年後くらいを見据えていますか?
飯野:
10年以内でしょうか。
(インタビュアー:株式会社オフィスエフエイ・コム 武田 美樹)